やがて時がたち春になりました。ジャンヌは自分が一人ぼっちではないことに気が付きました。ジャンヌの周りには優しく、美しい自然があります。ジャンヌは悪魔に問います悪魔と契ったのになぜ醜悪な老婆にならないのか、領主たちへの憎しみ・怒り・怨みを身体のなかに脈打たせているのになぜ憎悪の化身のような姿にならないのか。悪魔は答えます憎しみ・怒り・怨みが醜いと誰がきめたのか。ジャンヌお前は美しい。
  
  私ここで思いました。悪魔とは自然そのものではないかと、自然は時として残虐な悪魔となりまた或る時は慈悲深い女神にもなる。また、悪魔の造形がペニスそのものであることもシヴァ神のリンガをモチーフにしているのかなて気がします(リンガ(ペニス)とヨーニ(ヴァギナ)が結合して生まれるのがこの世界て話です)。
  するとジャンルは精霊に選ばれたシャーマンなのかもしれない。ジャンヌと結合してシャーマンとしての力を授けたのではと考えました。
絶望から始まった二人の新婚生活、ジャンはなんとかしようとボロボロになるまで必死に働き、ジャンヌも糸紡ぎをして夫をたすけました。そんな時一匹の悪魔がジャンが疲れ果て眠っている時ジャンヌの前に現れました。悪魔は言いました私はあなたがよんだからきだんですよ、厳しい生活のなかでジャンを何とかしたい、自分が強くなりたいとジャンヌの心の叫びを聞いたから来たのだと言いました。悪魔は手でしごいてあげると興奮して赤くなり、熱い息を吐き大きくなりました。ジャンヌにはそれが滑稽で新婚生活のなかで初めて純粋に笑うことができました。悪魔はジャンを救うことができますよと言って消えていきました。
  
  理由はわかりませんが、ジャンヌがつぐむ糸は大変良い値段でうれました。そのため領主が課す重い税金を払えるのは村ではジャンだけ、それを領主はとてもよろこんでジャンを税金の取り立て役に任命しました。農夫のジャンにしては異例の出世です。でもこのころからジャンが寝静まった深夜、悪魔がジャンヌの寝床にやってきて体を弄ぶようになりました。ジャンヌが拒絶するとジャンを助けてやったのはおれだとどんどんエスカレートしてゆきます。
  
  そんな時、戦争が始まりました。戦争にはお金がいります、ジャンは領主から戦費のため法外な金を集めろと命令されましたが集まりません。戒めのため手首を切り取られ絶望のなかジャンはジャンヌのもとに帰りますが、金が集められなけば処刑されてしまいます。ジャンヌはこの人を助けたいと必死に思いました。そこに悪魔が現れ。
「哀しみのベラドンナ」は言わずと知れた虫プロダクションが制作した大人向けアニメーションです。ちなみに私この「哀しみのベラドンナ」と言う題名が大嫌い。ジュール・ミシュレの原作は読んだことありませんが、この人の人となりを調べてみると反教条主義というか宗教による社会支配や権力者(宗教家)の腐敗に対して凄く怒っていた人。私も最初は刺激強すぎて良くわかってなかったけど、人間て愛し合って生殖して自然とは切っても切れない存在なんだという強いメッセージを感じたら「哀しみのベラドンナ」とか言うメロドラマみたいな題名は似つかわしくないと思った。公開当初は「la sorcière(フランス語で魔女)」の副題もついていたけどDVD販売では完全に無視。
奥方の小姓がジャンヌの噂を聞いてやってきました。小姓は自分は奥方をすごく愛しているが身分が違いすぎて相手にしてもらえない、一度でよいから抱き合って愛し合いたいと告発します。ジャンヌは催淫作用のある惚れ薬の花を小姓に持たせます。花の絞り汁を飲み物に混ぜ奥方にのませ、まさに思いを遂げようとした時、怒った領主に奥方ごと串刺しにされ殺されます。

哀しみのベラドンナ 或いは魔女の物語

荒野をさまようジャンヌの前に悪魔が現れます。
  
  ジャンヌは悪魔を、私を突き落したのはお前だ、私の全てを奪ったと悪魔をなじります。すると悪魔は確かにそうだが、お前を助けたのもおれだと。素直に心と身体をさしだす女より、自分がたっぷりと仕込んだ女がほしかったといいました。悪魔のように美しい身体に絶望と復讐心と神へ憎しみに燃えた心を持つ女、そうだお前だお前に惚れたといいます。
  
  悪魔(私は精霊だと思う)は”なにがしでかしたい、なにをしたい、なんでも好きなことをさせてやる。全てをお前に与えよう。”とジャンヌに告げます。
  
  ジャンヌは復讐を決心します。自分が地獄に落ちるきっかけとなった初夜のできごと理不尽にも自分を犯した領主と家臣、そそのかした奥方、それを救えなかった神に。そしてジャンヌは悪魔の女房になりました。
悪魔は、ジャンを救いたければ心と身体をよこせと詰め寄ります。そうするとジャンヌはいいだろう自分の身体は
  お前にくれてやる。でも心はジャンのものだと悪魔に自分の身体をさしだし、悪魔の思うままになりました。
  
  悪魔は信じられないような快感をジャンヌに与えましたが、ジャンのためジャンヌは必死にたえます。でも、耐え切れず快楽に狂い我を忘れ気を失ってしまいます。


快楽から目覚めたジャンヌ、でも悪魔によってくわえられた快楽によってジャンヌの心のなにかが変わりました。





とにかくあの女(ジャンヌ)を連れてこいと領主は怒り狂い家臣に命令します。

ジャンヌは民衆にいろいろな施しをします。サバトを開き行き過ぎた禁欲を解放したり、難産に苦しむ女房を持つ男には鎮痛薬を、子だくさんで子供をこれ以上産めない女には避妊薬、戦争で孫を失った老婆には哀しみを和らげる精神薬を。

国ではペストが流行しています。感染すればほぼ死しかありません。なのに領主は領民になにもせず外部と行き来を断ち城に引きこもりペストの流行をやり過ごそうとしました。
  
ジャンも感染して生きたまま埋葬されましたが、ジャンルの魔女(シャーマン)の力によって墓場から掘り返し、ジャンヌの住み処まで連れて来て薬草を使いペストの治療を施します。そしてジャンは回復したのです。
  (病気の治療もシャーマンの重要な仕事)







火あぶりにされながら、愛するジャンの死を見つめるジャンヌの哀しみ。火あぶりのシーンの演出は日本のアニメ史に残る名シーンだと思います。個人的に難があるとすればちょっと小林亜星の作曲したテーマのメロディがくさいかな。
  これがジャンヌの領主と神への復讐だったんですね、民衆の目を開かすこと。自分たちが生きる上で味わう苦しみや悲しを和らげる慈悲を与えてくれた女を命令に従わなければ火あぶりにして処刑してしまう横暴な権力者、その後ろ盾にある神。民衆に自分たちの本当の敵はだれであるかを知らしめる事。
  
  
  余談ですが、このラストシーンについては制作側でもめたり、出品したカンヌ映画祭での反響とかで複数あるようです。DVDの解説に書いてある話では、ジャンヌが火あぶりでおわるラスト、ジャンヌが火あぶりにされるのを悪魔が見ながら高笑いするラスト(これ全然だめだと思います。出品したカンヌ映画祭でも不評)、DVD版のように広場の女たちの顔がジャンヌに変わりフランス革命に導くラスト。
  初めて見たときはジャンヌの火あぶりで終わるというのが良いとおもいましたが、DVDを何度も見てるうちにジャンヌに感情移入して広場の女たちの顔がジャンヌになり、やがてフランス革命につながるラストもありかなと思いました。







領主はジャンヌに薬の作り方、使い方を教えれば、土地や地位をやろうと懐柔しようとします。でもジャンヌにはわかっていました、こんな奴らに教えればこの世にさらなる苦しみや悲しみを広げるだけだと。ジャンヌは拒絶します、怒った領主はジャンヌを火あぶりにします。

























ジャンルのところに、ジャンがやってきて自分を捨てた事を詫びて領主が薬の作り方や使い方を教えてくれれば悪いようにしない、土地もやろうと言っている。こんな事はもうやめて百姓の女房として二人でやり直さないかとジャンはジャンルを説得します。そして二人は愛し合います。
  
  ”信じているのね”と愛し合った後ジャンルはつぶやきます。自分の恋女房を手籠めにした領主を今も信じているジャンがやるせないのです。ジャンルにはジャンが自分のところに来た時点でこれは罠だとわかっていました。









ジャンの回復を知ったペスト患者たちは大挙してジャンヌのところに押しかけます。ジャンヌは分け隔てなく治療して患者たちを救いました。







ジャンヌが心も体もすべてを悪魔にささげて結合すると、この世の事と思えないような快感と森羅万象この世のすべてがジャンヌの体に流れ込んできた。



兵隊や群衆がジャンヌを追います。逃げるジャンヌ。
  
  今は飲んだくれになってしまったジャンの居る家まで逃げ帰ってきましたがいくらドアを叩いてもジャンは開けてくれません。
  
  ジャンヌは悟りました。自分はジャンに捨てられたのだと。





数年の戦いの後、領主は凱旋してきました。広場には凱旋を迎えようと群衆があつまっています。このころのジャンヌは金貸しを営み土地の経済を一手に握り領民たちも奥方様よりジャンヌの言うこと聞くようになっていました。
  
  その時突然奥方の小姓がジャンヌの緑の服を引き裂き”悪魔憑き””魔女”と告発しました。奥方はジャンヌの事を面白くなく思っていたのです。我々の権力を脅かす存在になっていると領主に吹き込みジャンヌをとらえようとします。


そして、男たちは戦争に行きました。


jジャンヌは緑の服を着ると直ぐに街にゆきました。緑とはこの世の王の色、つまり悪魔の色といわれ人々は恐れていました。
  
  領主にも金を貸さなかった狡賢い金貸しがどうしてかジャンヌのいわれるままに大金を用立てました。その金でジャンが集めるべき税金を建て替えました。
  
  









新婦を守れなっかた絶望と、不貞(処女を他人に奪われた妻→信仰厚いためと私はそう思った)により健気にも帰ってきたジャンヌをジャンは一瞬絞め殺そう思い首に手をかけす。そしてとんでもない事を考えたとジャンは絶望のなか泣き崩れます。
ジャンヌは領主の奥方の慈悲にすがろうとしました。


ジャンは聖職者に助けを懇願し。
  (お代官さまお許しください状態)
ジャンヌの若い美しさに嫉妬した奥方は。
  
  信仰厚く、勤勉で、操が正しい娘の処女は価値がある。領主さまに処女を捧げ、その後家臣どもにその美しいからだを与えよと。税が払えないのならば新婦の体で払えととんでもないことをぬかします。

その土地の習わしで結婚したものは御馳走(税金)を領主に納めることになっていました。ジャンは牝牛を売りお金を作り領主に納めようとしましたが、ジャンルの美しさに目を奪われた領主はこんな金ではだめだ10頭分の金を納めよと因縁をつけます。
  

時と所は中世のフランスの村、信仰心厚く優しい農夫の青年ジャンと同じく信仰心厚く美しい娘ジャンヌが恋をして結婚します。

ジャンは家臣たちに城からつまみ出され、ジャンヌは領主や家臣たちから輪姦されます。
「哀しみのベラドンナ」のすごい人
  
  作画監督杉井キサブローさんは東映初の長編アニメ「白蛇伝」から2012年公開の「グスコーブロリの伝説」まで日本のアニメの伝説のようなひとです。
  
  
話はこんな感じ